"Time weighs down on you like an old, ambiguous dream. You keep on moving, trying to slip through it. But even if you go to the ends of the earth, you won't be able to escape it. Still, you have to go there- to the edge of the world. There's something you can't do unless you get there."

「海辺のカフカ」 ♥ 村上春樹

'Kafka on the Shore', Haruki Murakami



Wednesday, October 6, 2010

人を表すことば

自分及び相手をなんと言うか

私たちがことばを使って対話を行うときに、必ずしなければならないことがある。それは、いったい誰が誰に対して話をしているのかを明らかにすることである。

たとえば英語を母国語としている人たちに、あなたのことばでは、話し手が自分のことを言う時、どんなことばを使いますかと尋ねれば、きっと、I だとか me だとか答えるだろう。フランス人にきけば、je とか memoi などと返事するに違いない。

それでは、話しの相手を指すことばはどうかときけば、英語ならyou、フランス語では tu、そして丁寧形の vous などが用いられていると教えられる。

このようにヨーロッパの多くの言語では話し手と話しの相手を示すことばに関するしくみは大同小異であって、人称代名詞という名で呼ばれる極めて限られた数のことばから成り立っている。


明治初期において、近代日本文法の先覚者たちが、このような西欧語文法の扱いに倣って、日本語の「わたくし」「ぼく」「おれ」 のようなことばを一人称代名詞と名付け、「あなた」「きみ」「きさま」 といった一連の語を二人称代名詞と呼ぶようになったのは、当時の言語学の発達段階を考えれば無理のないことであった。そこで日本語の一、二人称代名詞は数が多く、使い方が面倒だとか、日本語には、三人称代名詞が発達していないなどという記述がいまだに国文法の書物に見られるのも、この西欧語文法を下敷にしての見方が続いているからに他ならない。

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